とある芸術講座の「書評」にて

こんにちは!しばらく「本」ネタでブログをつなぎ「本の虫」を装おう、大島です。

あれは、ちょうど1年ほど前。とある場所で手にしたビラに飛びつき、即応募した芸術講座についてお話します。

いざ、北川フラム氏の芸術講座へ

それは、一般の誰でも応募でき、全て週末に開講されるという計4回の公開講座。そこで「なぜ飛びついたのか?」と問われれば、漠然と気になる単語が4つ並んでおりまして。「自然」「社会」「人間」「美術」。何気に気になりませんか?この4単語。チラシの効果測定的には、ドンピシャにハマった感が否めませんね。あの「大地の芸術祭」の総合ディレクターを努めているお方だと、その時初めて知ったという経緯です。

その時のチラシ(pdf)

この北川フラム氏の「フラム」という名前は本名だそうで、ノルウェー語で「前進」だそうです。名前負けしていなのがスゴイなと。昨今流行りのキラキラネームの前身?にしても、命名された時代を考えると何ともアバンギャルドなご両親なこと。

現代アートという名のもとで、成し遂げられたこと

ちょっとググったくらいの私がスゴイと言うのも何ですが、あの「大地の芸術祭」の9億円もの予算。その半分以上が、入場料からの収支見込だったこと。皆さんも、ご存知でしたか?

入場料 3,500円だとすると、
¥3,500 × 150,000 = ¥525,000,000

およそ15万から20万人もの来場者という計算になり、かなりの人数を大都市から、その開催地となる新潟の越後妻有(えちごつまり)まで呼び込まなければならなかったという事実。 当初、地元のお役人の人々に反対されてはいたものの、数々の困難を乗り越え、トリエンナーレ(3年に1度)というカタチで現在に至るそうです。

第1回(2000年)の時点で、既に来場者は16万人を超え、続く第2回(2003年)20万人、第3回(2006年)34万人、続く第4回(2009年)37万人と、 そして第5回(2012年)では、更に3割増しの48万人となり、その年の県内だけでの経済効果は、46億円だったと公表されています。
などと、偉人の成果をあたかも自分事のように自慢してしまいましたが、何がスゴイかっていう本題はやはり、現代アートという名のもとで、地域活性化が実現されていること
そこが全くもって素晴らしいなと、講座が修了して1年経った今、こうして感動しているあり様です。

参考:ARTiT | アーティストインタビュー

課題として出された「書評」

ようやく本題に戻ります。その講座初日、予め出されていた(チラシの裏面にあった)課題図書(3冊)のお話となり、自分なりに「書評」を書いて後日提出してくださいとのこと。 提出するとフラム氏本人から採点付きで、返却してくれるそうで。

課題図書(3冊)

  • 「忘れられた日本人」宮本 常一
  • 「限界芸術論」鶴見 俊輔
  • 「美の呪力」岡本 太郎

そこで話題は、この講義前日に亡くなられた書評家の丸谷才一さんの話となり。プロの書評家と評されていた丸谷氏の「書評」とは、以下のようなものでした。

丸谷氏の「書評」とは

  1. まずは話の内容
  2. 次に作者の経歴など
  3. そして、同じテーマで、他の作家はどういう風に書いてきたかの例題をあげ
  4. 最後に自分はどう思うか?を自分の言葉で書くこと。

そして、ふと思ったことは、一体、何冊読んだら良いのか?ということ。この3冊だけでも、かなりのボリュームがあるにも関わらずです。
今思えば、そこにプロと素人との差があるわけで、書評に関してド素人な私が、そんな大それた不安にかられること自体がおかしな話だったなと。

「書評」から垣間見える「家元」の流儀

結局、この「書評」という課題。果たせず仕舞いで終了したというオチではありますが、作家さんはもちろん、美術家や音楽家など。ただ絵や文章が上手いだけでは済まされない「家元」の流儀とは何か?そう改めて考えさせられる時間でした。
北川フラム氏の講座を聞いていて思ったのですが、出てくる出てくる人名の山。片手にスマホで検索しながら話を追っていても正直、追いつかなかないくらいでした。 大切なのは、先の丸谷氏の「書評」の3番目にあげられる「他の作家はどういう風に書いてきたかの例題」を知っているということ。その人の背景にあるプロとしての知識の差みたいなものが、その「家元」たる所以の一部ではないか、と浅はかではございますが、そう改めて実感させられたのです。

後日「大地の芸術祭」を調べてみれば、参加アーティストの募集要項にも、やはり別の課題図書(3冊)の「書評」が課せられていたのに、いたく納得したしだいで。

こうして改めて書いてみると、再びチャレンジしてみたくなったりもしますね。
むしろ期限切れで無理だと分かっているから湧いてくる、無意味な興味本位に過ぎないですかね。

丸谷才一さん(Wiki)