新たに入社したメンバーが増えたので、改めて僕たちがプロジェクトをどのように進めているかについてまとめてみたいと思います。本記事ではWebプロデューサーからWebディレクターへつないでいくフェーズに焦点を当てていきます。また、僕の勉強不足のため、WebプロデューサーとWebディレクターが一般的にどういう役割だと言われているかを把握していないので、当社ではどうしているかという視点で書いていこうと思います。
プロジェクトはWebプロデューサーの戦略から始まる
戦略を作る
Webプロデューサーの役割で最も重要なことは、プロジェクトが発生することになった、ビジネスの源流にある上位概念を探ることです。そこをしっかり掴むことで、ご相談いただいたお客さま、Webサイトを利用するユーザ、サービスを提供するメンバーが三方良しになるように戦略を作っていきます。
この時、経営コンサルタントや集客周りを担当するマーケター、メディアをバイイングする広告代理店など、ステークホルダーの関係性を把握しておくと、戦略がさらに実施しやすくなります。経営戦略とWeb戦略は密接につながっています。当社はお客さま(当社の場合、経営者が多いです。)の企業経営戦略までは立てられません。ですから、お客さまと経営戦略を共有する、もしくは、Web戦略を企業の向かっていく方向に合わせていく、ということを念頭においています。Web戦略においては、お客さまの一歩前を併走するペースメーカーでありたいと思っています。
僕がプロデュースする場合は過去の情報を整理分析して、そこから導きだされる近い将来をイメージすることが多いです。(僕の慎重な性格もあって、成功率を上げようとしてしまうので。。。)しかし、それだとイノベーションできないことも多いので、過去からは想像できないなるべく遠い未来を合わせて見るように心掛けています。
戦略をアウトプットする
その戦略を受けて、プロジェクトにおいて本質的に求められていることを言語化/ビジュアル化していきます。当社の場合、それが企画/提案書(付帯資料)というアウトプットになります。その時、次のようなことを頭に置きながらアウトプットしていきます。
- 戦略のコンセプトは?
- その戦略を実施することにより、どんな結果をもたらすか?
- 価値を生み出し続けるには、どういう仕組みが必要か?
- 施策を継続した結果、数年後にどうなっている状態をイメージするか?
この企画/提案書は、社外に出ない場合もあります。プレゼンに利用しないこともあるんです。モックアップやデザインでプレゼンした方が話が早いのであれば、企画/提案書を提出するというフェーズを飛ばすこともあります。ただ、社内用として、プロジェクト計画をドキュメントとして残します。プロジェクトが進行した時に、それを基にメンバー各々が作業計画を立てます。
戦略を実行するために必要なプレイヤーをアサインする
企画書/提案書をアウトプットをする時点で、メンバーのアサインも想定しておきます。企画段階においても、それぞれにタスクを分解して渡しておきます。例えば、IA(インフォメーションアーキテクト)には戦略が具体的に実施できるコンテンツ構造の設計を依頼し、Webアナリストには戦略の実現を邪魔する要素を抽出してもらいます。
このように当社の場合、戦略の段階で多くのメンバーが動きます。当社は競合プレゼンをお断りしているのですが、そうせざるを得ない理由の一つがここにあります。当社は戦略を重要視しているので、一般的に考えられている制作開始の前に、多くの時間と工数をかけます。そのため、この部分に価値を感じていただき、投資コストを見ていただかないとグランフェアズを経営していけなくなってしまうのです。
Webディレクターが戦略を戦術に落とし込む
『not to do』で仕事の品質を上げる
プレゼンを受けたお客さまがその戦略を承認したら、今度は戦略を戦術へ落とし込んでいきます。ここでWebプロデューサーは、プロジェクトを進行するメイン担当をWebディレクターへ引き継ぎます。Webディレクターは戦略を具現化して、制作現場に落とし込んでいく戦術を検討・設計します。
この時、Webプロデューサーは注力すべきポイントをわかりやすく伝えなければなりません。このポイントを軸に、Webディレクターは『not to do』を考慮しながら、表現の方向性、実装の要件定義やシステムの機能仕様等を決めていきます。つまり、まず『やらないこと』を決めるのです。
to doは挙げだすとキリがありません。まずは、しないこと『not to do』を決め、それ以外のことをギリギリまで詰めます。ここがしっかりできないと、ムラのある仕事になり、お客さまの満足度は大幅に下がります。その結果、too muchサービスで赤字になり、デスマーチの炎上プロジェクトを引き起こしてしまいます。最終的には、効果を上げられないWebサイトが出来上がってしまい、グランフェアズが重要視している運用フェーズにたどり着けなくなります。
戦略と戦術の関係性
戦術をすぐ使えるTipsとか手法として説明してくれないか、と質問をいただくことがあります。ですが、戦術はマニュアルとは違うため、一律に言えることではありません。戦略と戦術についての基本的な関係性を理解すると、手法ありきではないことをわかってもらえると思います。
戦略と戦術の関係性を、僕の好きな戦国武将の徳川家で例えてみます。
謀反の疑いを聞きつけた信長は、徳川家の重鎮酒井忠次に詰め寄ります。酒井は、疑惑を否定して信長に敵視されるか、疑惑を認めて信康に危害が及ぶか、お家存亡の重大な岐路に立たされます。信康は家康を始め家臣団から将来を嘱望された後継者でした。結果、酒井は信長の目前で信康への疑惑を暗に認めます。同盟を続ける戦略を最優先するために、家康の判断を待たず信康を犠牲にすることを決めたのです。
- 戦略:織田家と強固な同盟関係を築くこと
- 戦術:嫡男信康の切腹を受け入れること
戦略とは大きな代償を払ってでも守らなければならないほど重要であり、チームにはその戦略を貫徹する覚悟が必要です。グランフェアズでも、戦略は絶対です。プロジェクトにおいて何を最優先するかは、常に明示されているようにしています。僕は経営においても同じ考え方をしています。
グランフェアズはWebディレクション会社
同業他社様から、グランフェアズのワークフローは大規模サイトの構築が前提だから参考にならない、と何度かご指摘を受けました。誤解があるようですが、当社のワークフローはプロジェクトごとに足し引きをしています。それは戦略から『not to do』が決められ、それにより最適なワークフローに自然となっていくからです。
僕たちの言っているプロデュース・ディレクションは、仕事の回し方が上手いとか、そういう次元では考えていません。冒頭でも書いたように、お客さま、ユーザ、関係者全員にメリットが発生することを戦略として考え、戦術に落とし込み実行することだと捉えています。仕事の回し方みたいな対処療法をどれだけ学んでも、根本的な解決にはなりません。プロジェクトは毎回何らか違う要素で構成されるので、汎用的な視点の高い考え方を身につけ、課題(お客さまの想い)にフィッティングしていく力を磨くことによってプロジェクトの品質は向上するのだと思います。