何を今さら当たり前なことを、と思われるかもしれません。しかし、その当たり前のことをきちんとできていることが意外と少ないのでは、と僕は感じています。
何を差し置いても、コンテンツに興味を持とう
実際の体験として、公開されているWebサイトでも、コンテンツを単なる文字列として捉えてしまっているサイトに何度か出くわしたことがあります。それらのサイトでは、次のようなことが起きていました。
- 1ブロックごと(見出し単位)の意味はわかるが、上から順に読んでいくと意味が通らない。
- 見出しタイトルと内容が合っていない。
- 見出しの粒度(くくりの大きさ)が揃っていない。
- サンプルテキストのまま。
- ナビゲーションのラベル(ボタン名)と遷移先にある情報が結びつかない。
こういったことが起きる理由の一つに、コピー&ペーストで文字のカタマリを配置していくという「感覚」があるのだと思います。自分たちが制作しているページが、どういった文脈の中で、何を言っているのか、を把握せずに進めてしまっているのです。
お客さま(プロジェクト発注側)側もWebインテグレータ(制作側)も、双方がコンテンツ自体に興味を持っていないために、こういったことが起きてしまいます。
せっかくの顧客接点で、良い印象を与えるチャンスを逃してしまっているのです。
コンテンツ管理不足は、顧客接点を台無しに
インターネット、モバイルデバイスの普及によって、企業はそれ以前と違った顧客接点を持つようになりました。顧客に良い印象を持ってもらうためには、顧客接点すべてで同じ印象を持ってもらう必要があります。
もし同じ印象ではない場合、取り繕っている可能性が高いか、顧客の方を向いていないか、といったことが考えられます。
逆に考えてみると、そういった企業を見抜くには、複数接点での印象に一貫性があるかどうかを確認してみると良いかもしれません。社風が漏れ出てしまっていることも多いと思いますよ。
例えば、こんな会社をどう思いますか??
- Webサイトは、商品のスペックを中心とした情報提供のみで、低価格・割安感を強調。
- 商品紹介パンフレットは、イラスト多用で、アットホームな社員の交流を紹介。
- 生産工程を見せる動画は、大人っぽい表現で、細部まで品質にこだわっている頑固さをアピール。
- ダイレクトメールは、固い文面に明朝体テキストのみで、ビジネスライク。
- 商品パッケージは、スタイリッシュなデザインと華美な包装材で、高級感を演出。
コレではどういう雰囲気の企業なのか、イメージがつかめません。コンテンツの管理が行き届いていないばっかりに、こういったもったいないことも起きます。
仮に、今が売れていたとしても、それは1箇所の顧客接点だけを経て購入に至っている可能性が高いです。リピート購入を期待するような商材では、どこかで綻びが出てしまい、顧客をがっかりさせてしまうでしょう。
顧客接点を活かすのは、良質なコンテンツ「群」
顧客接点を活かしていくには、良質なコンテンツをあらかじめ持っておくことが大切です。そして、この良質なコンテンツと顧客が接点を持った時、最適な表現方法で情報を提供できれば、好印象を残すことができます。
どういった環境下なのか、どういう気持ちでいるのか、情報に過不足はないか。有益な情報を快適な体験で提供してもらえることは、情報を探しまわっている顧客にとって、とてもうれしいサービスです。
顧客接点での満足度を高めていけば、コンテンツは企業活動においてどんどん有益な資産になっていきます。コンテンツは会計上では、資産として計上されません。しかし、大いなる可能性を秘めた無形資産です。質の高いコンテンツを膨らませれば膨らませるほど、そこからもたらされる(売上だけではない)リターンも膨らんでいきます。
【実例】僕自身がコンテンツによって受けた恩恵
ブランドブックは、元々持っていたコンテンツのアウトプット
自分たちの考え方は、以前から元々持っていたコンテンツです。それにプラスして、そんな考え方をする人たちはこんな顔をしているんだとわかってもらうために、自分たちの写真を撮影しました。
僕たちらしいテイストが出せるフォトグラファーに、ムリを言って東京から来てもらいました。北欧でロケしたかのような、優しく親しみやすい世界観を表現したかったからです。
撮影場所は、新しくできたオフィスと、堀内公園をロケハンして決めました。移動遊園地という社名の由来から、イメージに最も近いオールドで小ぶりな観覧車がある公園を選びました。また、オフィスの家具や造作は、もともと僕が北欧家具が好きなことと、シンプルで凛としていながら温かい雰囲気を出すためにデザインしていたので、イメージはぴったりでした。
新しく写真というカタチでアウトプットした、オフィスや移動遊園地というキーワードも、元々持っていたコンテンツだったのです。
僕は元々持っていたコンテンツを顧客接点にあわせて表現をアウトプットしたことにより、商談成約(売上)というリターンを得ることができました。
さらに付け加えておくと、ブランドブックからは、商談成約(売上)というリターンだけではない、それ以外のリターンもたくさん得られました。だから、僕が言っている「成果」とは、売上向上だけを指してはいません。自分自身が売上向上だけではない「成果」を狙い、実際にそれを得ているからです。この話は長くなってしまうので、ここではこれぐらいにして、また別の機会にしますね。
グランフェアズのサービスはすべて、コンテンツファースト
Webサイト・システム自体は、会計上も資産として計上されます。しかし、僕はHTMLそのものより、コンテンツの方が資産価値が高いと思っています。
コンテンツとWebサイトの関係性を、チーム内ではよく料理に例えることがあります。
素材が悪ければ、どんなにいい味付けをしても、そもそもの素材の良さを活かした料理より美味しくはならない。
<Webサイトの場合>
コンテンツが悪ければ、どんなに設計やデザインを工夫しても、そもそもの良質なコンテンツが提供する価値には勝てない。
まず、コンテンツありきです。
グランフェアズでも、コンテンツがWebサイトを利用する人にとって有益であるか、どの表現が伝わりやすいか、を優先順位の一番に置いています。SEO・インフォメーションアーキテクチャ(IA)・レスポンシブWebデザインというサービスも、すべてこのコンテンツファーストという考え方で実施します。
お客さま(プロジェクト発注側)側もWebインテグレータ(制作側)も、良いコンテンツを開発することから考え始めるべきです。
コンテンツのネタ元をお持ちのお客さま(プロジェクト発注側)側は、Webインテグレータ(制作側)への情報提供が必須です。情報提供をせずに丸投げでは、お客さまのビジネスに貢献できるWebサイトは出来上がりません。ビジネスに貢献することできれば、そのコンテンツ・Webサイトの開発にかかった費用は、コストから投資に転換します。
プロジェクトは投資活動
お客さま(プロジェクト発注側)側もWebインテグレータ(制作側)もお互いに、コンテンツは資産であること、そのコンテンツをアウトプットするプロジェクトは投資活動なんだ、という意識を持つことが重要です。だから、その投資から生まれた資産は、お客さまのビジネスを後押しするものでなければなりません。
関係者みんながやりがいを持って積極的に関わっていけるプロジェクトにするには、この意識を共有できるかどうかが、大きな分かれ目になります。ここが共有できた時、お客さまから「あなたたちを信じます!」と言われたんだと、僕はいつも感じます。