創業以来、グランフェアズではプロジェクト管理ツール(愛称「コラボG」)を使って、社内外のメンバー間でプロジェクトに関するあれこれを共有してきたのですが、設置しているサーバがかなり古くなってきたこと、またデータ量も肥大して動作が緩慢に感じられたこと、時々メールが配信されないといった障害も報告されたので、「そろそろツールを変更しよう」と一念発起。「プロジェクト管理ツールの乗り換え」プロジェクトが立ち上がりました。それが2015年の夏のことです。
結果として2017年3月現在、「Wrike」というASPサービスに落ち着き、大きな不備や不満を感じることなく日々活用しているのですが、途中7ヵ月ほど「Zoho Projects」を契約して移行を試みたりと、プロジェクトの完了まで約1年もかかってしまいました。
ここでは、移行完了までに調べたことや考えたことなどを記録のためにまとめておこうと思います。
似たような環境で、プロジェクト管理ツールの導入や変更を検討されている方に、何らかの参考になればうれしいです。
※各ツールで紹介している内容は当時のものです。現在はバージョンアップにより変わっている可能性がありますのでご注意ください。
移行前の環境
プロジェクトの管理は「コラボG」で一元化
グランフェアズでは、社内外で発生するやり取りの全てをプロジェクト管理ツールで共有しています。初代のツールは「active collab」で、これのサーバインストール型を購入し、ホスティングしているサーバにインストール・カスタマイズして使っていました。当時の仕入れは5万円。サーバにはランニング費用が掛かるとしても、このツールだけで言えば初期の5万円だけで6年間使えたので、コストパフォーマンスも文句なしでした。
- サーバインストール型
- プロジェクト数/ユーザ数は無制限
- 「タスク」機能あり
- 「ディスカッション」機能あり
- 「ファイル」機能あり
- 「Wiki」機能あり
- カスタマイズして日本語化
Gitの利用開始に合わせてBacklogへ
2015年7月から、社内でGitの試験運用が始まりました。全員がまだまだGit初心者だったこともあり、UIがとっつきやすく日本製という理由で「Backlog」を使い始めました。見た目が可愛くリビジョングラフも分かりやすいので、Gitのリモート操作+課題の管理として初学者にとても優しいツールだと思います。
- ASP型
- プロジェクト数/ユーザ数に制限あり
- 「Git」機能あり
- 「タスク」機能あり
- 「ファイル」機能あり
- 「Wiki」機能あり
- そもそも日本語
プロジェクトの管理は移行できなかった
ご存知の通り、Backlogはプロジェクト管理とGitの管理機能が合体した素敵なASP。あわよくば「コラボG」でやっているプロジェクトの管理もこちらに移行できれば…と期待しましたが、運用開始後すぐに「これではダメだ」と断念することに。その理由は「タスク」に複数の担当者を設定できなかったこと。
【ファイルAのソースコードの編集】レベルまでブレイクダウンされた課題であれば「タスク」の担当者は1人が適切ですが、グランフェアズが取り扱う仕事の課題はもっと粒度が大きく、複数人で協議しながら解決していくものがほとんどなので、手軽に協議の場を設けられない仕様が私たちのワークフローに合わなかったのです。
逆になぜずっと「コラボG」を便利に使えていたのか。それは複数人でのコミュニケーションを前提とした「ディスカッション」という機能があったからで、それが私たちには必要だということが分かりました。
本当に必要な機能を改めて考える
Backlogでの失敗を受けて、もう一度「本当に必要な機能」を絞り出しツールを選びなおすことにしました。「あれもこれも将来使えると便利かも」という可能性ではなく、今の毎日を確実にスムーズにすることに重点を置き、ピックアップした要件が次です。
- 必須
-
- UIが分かりやすい
- タスクの「担当者」を複数設定することができる
- サブタスクを作ることができる
- タスク自体の説明欄がある
- タスク内でコミュニケーションができる
- タスク更新時のメール送信先を「担当者」と別に設定することができる
- 通知されるメールの日本語訳がきちんとしている
- 通知されるメール本文に更新されたコメント全文が掲載されている
- あるといいな
-
- Gitとタスクの連携
- プロジェクトのWiki機能
- タスクのタイムトラッキング機能
こうして見てみると、必須なのは全部「タスク」に関する要件で、しかもかなり細かい仕様でした。
いろんな職種のメンバーが集うからこそ必要なこと
私たちは、1つのプロジェクトに対しホームメンバー全員と複数のサテライトメンバーを要件に応じてアサインします。サテライトメンバーはプロジェクトインした期間のみツールに触るので「UIの分かりやすさ」は当然必要。また、いろいろな職種のメンバーが携わるので、関連の薄いタスクの通知は飛ばないようにできたり、逆に「担当者」ではないけど通知が飛ぶように設定できたりと、タスクの進捗状況の把握をスムーズに・ストレスなくできる仕様がとても大切なのです。
あとは、日本語への対応度合。ホームメンバーだけで使うのであれば「頑張って英語に慣れなさい」でいいかもしれませんが、久しぶりに使うメンバーにはストレスフル。特に通知メールが「ヘンテコ日本語と英語まじり」だと、開封しないといけないわ何書いてあるか分からんわと、一気に作業効率が落ちてしまいます。 「日本語対応!」と書いてあっても程度は様々なので要注意ですね。
Gitの管理とプロジェクトの管理は別でいい
ソースコードの管理が必要なタイミングは、プロジェクトのごく一部。管理するツールが複数になるのはどうなのかなと当初思っていましたが、実際やってみると問題に感じることはなく、むしろ明確に分かれていることのメリットもあります。自分たちに適したプロジェクト管理ツールをしっかり構築することを第一優先にしたタイミングで、Gitの管理はあっさりとBitbucketに切り替えました。
候補にあがった4つのツール
調べた中から条件に合いそうなツール4つ(ZIRA Core / Teamwork projects / Zoho Projects / Wrike)を選定。無料トライアルを利用し、ホームメンバーで実際に使いながら検証を進めました。
ZIRA Core は導入ハードルが高い印象
ZIRA Core https://ja.atlassian.com/software/jira/core
SourceTreeでも有名なAtlassianのプロジェクト管理ツール。ソフトウェア開発に特化した「JIRA Software」では開発系以外のタスク管理が難しかったので、マーケティングチームにも向いているという「ZIRA Core」をトライアル。
有効に活用するためにはきちんと設計をして導入した方が良さそうで、難しいなと感じました。ゲストユーザなし、15ユーザまで$50/月というユーザ数による価格設定がコスト面で気になったのと、機能が少ない割に価格が高い事が理由で、4つの中では一番低い結果になりました。
Teamwork Projects は発展途上
Teamwork Projects https://www.teamwork.com/project-management-software
ぱっと見た感じ使いやすそうでデザインも可愛く、プロジェクトを横断したスケジュールをカレンダー表示で確認できたりと機能も充実していて印象は良かったです。
問題だったのは、肝心の「タスク」画面の操作の分かりにくさ。タイムトラッキングができたり、期日の設定変更ができたりと、タスク一覧画面で細かな設定ができることがメリットである反面、アイコンで全ての機能を理解させるUIだったので、マウスの操作が多く使い勝手がよくなかったです。
あと残念だったのが日本語への対応。翻訳されているというよりは、単語が日本語に置き換えられているという感じなので、画面上切れて欲しくないところで文章が切れていて読む事ができなかったり、通知されるメールの表題や本文がヘンテコだったのでこのツールも採用しませんでした。
メンバーに一番人気、Zoho Projects を採用することに
Zoho Projects https://www.zoho.com/projects/
Zoho ProjectsはCRMやメールなど業務系クラウドサービスで有名なZohoが提供するプロジェクト管理ツール。他の3つに比べてデザインはかなりシンプルで、少し古風な雰囲気さえする昔ながらのプロジェクト管理ツールといった印象です。価格も50プロジェクトまで$40/月と一番リーズナブルで、長く使っていた「コラボG」とメニュー構成が似ていたことからZoho Projectsを正式に採用することになりました。2016年1月末のことです。
契約して半年、本当の移行は結局できませんでした
無料トライアルの時から感じていた「どこにいるかが分かりにくい、タスクを横断した操作がしにくいな」という不安がネックになって、サテライトメンバーが加わる本番のプロジェクトをZoho Projectsで管理することは結局できませんでした。乗り換えを検討し始めてからすでに半年経っていたので焦ってもいたし、いろいろを検証することに疲れてしまっていたんだと思います。「使えなくはないし、値段も高くないし、これでいいよね」と半ば諦め気味に決めてしまった気がします。無駄な投資をしてしまった。CEOごめんなさい。
贅沢だけど、Wrikeを使おう
4つのツール比較において、メンバー内での1番人気はZoho Projects、2番がTeamwork Projectsで、Wrikeは3番目でした。なぜ2番目だったTeamwork Projectsを採用しなかったのか、それは両者を選んだポイントが同じだったからです。
Zoho ProjectsとTeamwork Projectsの共通点は一般的なメニュー構成・画面遷移からくる安心感と手頃な価格。暗黙的に「この価格なら多少の使い勝手は目をつぶろう」ということ。でも結局、毎日使うものに妥協って許されなくなるんだと思います。同じ失敗を繰り返したくなかったので、費用面で諦めていた(でも使ってみたかった)Wrikeを採用することに決めました。
これだけ費用を掛けてもいいのだろうかという思い
「費用面で諦めていた」と書くと、トップがケチケチけちんぼなのかと思われるかもしれませんが、CEOは「それで作業効率が上がってコミュニケーションが円滑になるなら全然いいよ」と最初から言ってました。気にしていたのは私です。G Suite(旧 Google Apps), Office 365, Adobe Creative Cloud, そしてBitbucketとWrike。この小さなチームに与えられた武器はとても強力なものばかり。
メンバーには各ツールに精通し、与えられた武器にさらなる磨きを掛けてほしいと願っています。
Wrikeは実際とてもいいです
Wrike https://www.wrike.com/ja/
最後にWrikeについて。
Wrikeは他に上げたプロジェクト管理ツールと画面の使い方が違っていて、見た目の印象も遷移方法もまったく違うので、「洗練されているけど使いこなせるのかな?」という印象を持ちました。使い始めには、実際の運用をシミュレーションしたうえでルールを決めたり、使い方に慣れるためのプロジェクトを用意したりとある程度の初動工数も必要でした。ただ、展開時の学習期間はほぼゼロ。利用開始後1ヵ月で全てのプロジェクトがWrikeで管理されるようになりました!
Wrikeを使い始めてまだ4か月ですが、もう何度も(勝手に)バージョンアップがされていて、ASPの良さを改めて感じます。良くできたツールだと思うので、ぜひ使ってみてください。
まとめ
こうして2016年11月、晴れて「コラボG」は引退となりました。紆余曲折ありましたが「これだ」と思うものに辿り着いてホッとしています。プロジェクト管理ツールを考えることは、自分たちの仕事内容・ワークフロー・チームを考えること。しんどいお題目ですが、このタイミングでやれてよかった。とても有意義で楽しい時間でした。
- プロジェクト全体の管理は「チケット駆動型」にはならない
- 将来の可能性ではなく、今を快適にするものを選ぶべし
- 業務系アプリのUIは、マッチングが難しい
- 買わない理由が価格なら、買った方がいい
ZIRA Core / Teamwork projects / Zoho Projects / Wrike の比較検討資料(当時)
その他調査したプロジェクト管理ツール一覧
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