事件は現場で起きている!
前回投稿の、プロジェクトのスタートフェーズで、「事件は現場で起きている」と書きました。これについてはいくらか誤解があったようなので、そのあたりも絡めて今回のテーマである「お客さまのファンになる」について書いていこうと思います。
それは「事故」です!
僕の言葉足らずで、現場が制作過程だけを指しているのだと思われた方もいるかもしれません。制作過程で起きる様々な問題が「事件」だと、みなさまの誤解を招いてしまったようです。誤解を解くために、はっきりと言いますが、それは「事故」です。繰り返しますが、制作過程で起きているトラブルは、作業ミスやミスコミュニケーション、確認不足による「事故」です。
「事件」はコレです!
では、一方の「事件」とは何か?「事件」は、僕たちが知らない場所、簡単には解明できない流れの中で起きます。お客さまの事情、サイトを使うユーザの都合、経済市場の動向など、複合的な理由からプロジェクトの問題点が浮かび上がってきます。そのお客さまが頭を抱えて困り果てている問題点・課題を、「事件」と呼んでいるのです!では、「事件」にはどう取り組んでいけばよいか?現場では最初に何をすべきか?
それは、まずお客さまのファンになることです。
事件解決のカギは、現場検証で見つかる
「事件」を解決するには、まず現場検証からです。僕が好きな水谷豊主演のドラマ「相棒」シリーズでも、主人公の右京さんは必ず現場に行き、鑑識が見逃すような細かいことまで興味を持って迷惑がられますw。右京さん自身も、「細かいことまで気になってしまうのが、僕の悪い癖」と悪びれずに言っています。しかし、その細かいことが、事件解決への糸口になるのです。
僕はWebのプロジェクトでも一緒だと思っています。みんなが気にも留めないようなことにも興味を持ち、不思議がられる。しかし、そこから企画の切り口を見つけることができ、最終的な成果に結びついたり、プロジェクトメンバー(もちろん、お客さまを含む)の支えとなるビジョンになったりする。実際にそういった経験を何度もしてきました。
Webプロジェクトでの現場検証とは、お客さまが取り扱っている商品・提供しているサービスを、お客さまと同じぐらい詳しく知ろうとする行動です。例えば、アイドルや鉄道のファンが、そのアイドル自身より車掌より詳しいことがありますよね?それぐらいお客さまのビジネスを好きになり、詳しくなることです。
実際に、お客さまから「ウチのサービスについて一番詳しいのは、グランフェアズさんですね!」と言っていたただくことも、少なくありません。そう言ってもらえた時には、ファン冥利に尽きます。
お客さまのことをとことん知ってしまうと、どんどん好きになっていってしまいます。そうすると、自分の存在をもっと意識して欲しくなって、お客さまの気を惹きたくなります。もっと喜んでもらうために、何かできることはないか!?そうやってずっと考えていると、お酒を飲んでいても、お風呂に入っていても、ベッドでウトウトしていても、提案を思いついてしまいます。思いついてしまうと、喜んでくれるお客さまの顏が浮かんで黙ってはいられなくなります。
聞き込みでは、Webの外の情報も気にする
ファンになると、たくさん聞きたいことが出てきます。お客さまの気持ち、考え方、置かれている環境を知りたくなります。だから、Webと直接関わりないことでも、お客さまが営んでいるビジネスのことをとことん聞きます。
・そのモテたい相手にどう見られたいですか?(ブランディング)
・嫌いな会社・タイプはいますか?(競合先)
・逆に、どんな会社にあこがれていますか?(競合先)
・何のために事業をしていますか?(目的・ミッション)
・特技はなんですか?(強み・コンテンツ) etc
答えてもらえる限り、こんなことを突っ込んで聞いています。曖昧な証言でも構いません。少しでも事件解決のきっかけになる証言を集めます。それをどう繋ぎ合わせるかは、僕たちの手腕次第です。いきなりサイトの話はしませんし、聞くこともありません。事件解決への近道は、事件の当事者からの地道な聞き込みにあると信じているからです。
他人事のようなWebサイトは作りたくない
お世話になっている、立命館大学の佐藤教授がこんなことを言っています。
私は、広告表現の危機とは、社会の危機だと信じて疑わない(断じて、ビジネスの危機などではない)。「きれいな花だな」と感じることなしに、「きれいな花でしょ」とばかり喧伝する広告によって埋め尽くされた社会を、怖くて、私は想像することができないからだ。
僕も、自分事として「きれいな花だな」と感じることができないのに、他人事のように「きれいな花でしょ」と伝えるWebサイトを作りたくはありません。何かを伝えるには、まず自分で感じることが、最初だと思うのです。そのうえで、伝えたい人にも、同じように感じてもらえるWebサイトを作りたいのです。それが僕の「生業」だと信じています。
この仕事をするうえで、専門性は当然として、審美眼を磨きたいと常々考えています。Webサイトへ訪れる人たちにどう見せると、自分と同じように感動してもらえるのか。自分と同じように、お客さまのファンになってもらえるのか。そのためのデザインを施したいし、コピーを書きたいし、コンテンツの内容を考えたいです。
お客さまを今よりもっと素敵に見せるには、お客さまの良い所を誰よりも知る必要があります。そうしてその良い所を引き出しプロデュースするのが僕たちの役目です。お客さまのファンになれない限り、表面的ことをさらって「きれいな花でしょ」と喧伝(けんでん)するばかりになってしまいます。
これはグランフェアズの行動指針
チーム全体がお客さまのファンになっていくには、WebプロデューサーとWebディレクターの働きがとても重要になります。チームメンバーへお客さまの魅力をうまく伝えられるかどうかという点に、プロジェクト全体の品質は大きく影響を受けます。画面設計やデザイン、開発においても、もっとこうするとお客さまらしいとメンバー各々が考えるようになるからです。個人の好みや感覚で話すメンバーはいなくなり、各々の議論が建設的になります。
僕は、この仕事を始めた時から、何だかよくわからないことをしてくれる「Web 屋」ではなく、お客さまの「仲間」でありたいと思っていました。お客さまと同じ目線で課題を共有したいし、同じテンションで目標を目指したい。僕たちだからこそ持てる、客観的な視点で解決策を考えたい。それを形にした結果が、僕たちが携わるWeb サイトであって欲しいと思っていました。
ずっと心の中にきちんとやるべきことをきちんとやるチームに入りたい、という気持ちがありました。でも、そんな地味なことに主眼をおいている会社を、他に見つけることができませんでした。そこで仕方なく自分でグランフェアズという、きちんとやるべきことをきちんとやるチームを作ることにしました。運営堂の森野さんとタッグを組んだのも、きちんとやるべきことをきちんとやれているかをさらにシビアに捉えるためでした。他人事ではなく自分事として覚悟を持って取り組んで、お客さまの「仲間」であり続けるための自分たちへの挑戦です。
自分が感じることもなく、ただ他人事のように作られるWebサイトを、グランフェアズの仕事からは撤廃したいと思っています。正直なところ、まだ100%そうできているわけではありません。心を亡くして作業に没頭することもあります。ただ、それを続ける企業は淘汰されていくと思いますし、そうさせる企業も今後は市場から退場させられていくでしょう。だから、自分事としてのめり込めるプロジェクトを1つでも多くプロデュースするのが僕の使命なのかなと思っています。そういったプロジェクトを選んでいくことは、僕の持ち場で行使できる権利だと考えているからです。
僕は、仕事は義務じゃなく、権利だと思うんです。ただ食べていくだけなら、沢山の選択肢があるはずです。その選択肢の中から、せっかく今の仕事と生活を選んだのだから、世の中の役に立つことをしたいと僕は思います。それが自分で選んだ権利なのだから。
グランフェアズは、自分たちがファンになれる素敵なお客さまと一緒に成長していくチームとして作りました。融通の効かない頑固な一面もあるチームですけど、お客さまと一緒になって本気で戦います。そんなグランフェアズのファンになってくれるお客さまが増えていくことを願って、お客さまのファンになることをチームの行動指針としています。